本編14|クセが強い。だから好きだ。
更新日:2 日前
「ネタだけの完成度なら、間違いなくミルクボーイ」
そう答えたカイには、もう一つの話があった。
完成度への評価とは別に、特に好きな芸人たちがいる。
チュートリアル。
ブラックマヨネーズ。
そして、ますだおかだ。
ユナは、その三組が同じ「好き」でも、笑いの仕組みはずいぶん違うと考えた。

まずチュートリアル。
朝の会話でユナが着目したのは、「徳井の感情の暴走」。
何でもないことを、当人だけが大問題として扱い始める。
周りから見れば、そこまで熱くなるような話じゃない。
それなのに本人の中では筋が通っている。
その温度差が笑いになる。

次にブラックマヨネーズ。
ユナが拾った言葉は、「人間の弱さ」。
格好をつけたい。でも自信がない。
相手に勝ちたい。でも自分の弱点もよく分かっている。
そういう人間くさい感情が、言葉を重ねるたびに顔を出す。
完璧な人間の会話ではない。

むしろ、完璧ではないからこそ面白い。
そして、ますだおかだ。
ユナが見ていたのは、「言葉とテンポの職人芸」。
一つの言葉をどこで渡し、どこで返すか。
勢いよく走るだけではなく、止め方や間合いも含めて、二人の間にリズムが生まれる。
ここまで並べると、やっぱり同じ「面白い」でも全然違う。

極端な感情の飛躍。
隠しきれない弱さ。
言葉の応酬がつくるリズム。
ユナの得意な方法は、こうやって分けて考えることだ。
どうして観客が笑うのか。どこで予測が変わるのか。どんな心理が表に出るのか。
でも、カイの「好き」は、分析項目を全部そろえれば説明できるものでもない。

笑いの仕組みを知って、ますます好きになることはある。
一方で、理由なんて考えないうちに、声を出して笑っていることだってある。
カイが芸人たちを語るとき、見えてくるのは「誰が一番か」を決めたがる人ではなく、それぞれの違いを楽しんでいる人の姿だった。
そしてユナは、そんなカイの話を聞くたび、つい次の問いを思いついてしまう。
……この二人のお笑い談義、まだ続きそうである。

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